金融データサイロを解消!iPaaSによる自律分散型アーキテクチャーとは

金融データサイロを解消!iPaaSによる自律分散型アーキテクチャーとは

銀行業界においてデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れが加速する中、多くの金融機関が顧客体験の向上や業務プロセスの効率化を目指しています。その手段として、CRMやSFA、融資支援、人事、会計といった特定の領域に特化したSaaSの導入が急速に進みました。しかし、こうした便利なツールが部門ごとに個別に導入された結果、社内の各所にデータが孤立して蓄積される、データのサイロ化が顕在化しています。本記事では、銀行業務におけるシステムの分断がもたらす実務上の制約を整理し、iPaaSを中核とした疎結合型の連携基盤(本記事ではこれを自律分散型アーキテクチャーと呼びます)について解説します。

iPaaS データ活用

業務システムの分散が招く実務上の制約とデータの分断

各部門が最適なサービスを選択して導入することは、短期的には特定業務の効率化に寄与します。しかし、銀行全体という俯瞰的な視点で見ると、顧客データや勘定系データが適切に連携されていないことによる弊害が生じてしまいます。例えば、営業部門の担当者が外訪先で顧客の最新状況を確認しようとする際、SFAや融資稟議システム、さらには外部ベンダーが提供する財務データベースなど、複数のシステムへ個別にログインして情報を照合しなければなりません。こうした顧客情報の断片化は、迅速な意思決定を妨げる要因となります。

また、情報系システムから出力されるデータが固定の形式に限られているため、高度な分析が必要な場面では、複数の帳票からデータを抽出して表計算ソフトで再集計するといったアナログな手作業が発生しがちです。その結果、IT部門においても、現場からの個別の依頼に応えるための作業に追われ、いわゆるレポートファクトリー化が進行します。新たなシステムを導入するたびに既存システムと個別開発で接続する構造は、システム間の依存関係を複雑にし、将来的な改修やモダナイゼーションの障壁にもなります。

自律分散型アーキテクチャーによる銀行業務の最適化

銀行におけるシステムのサイロ化を解消し、データを組織横断で活用するためには、各システムを柔軟に繋ぐ自律分散型アーキテクチャーの構築が有効です。 iPaaSをハブとした疎結合型アーキテクチャーは、特定のシステムに依存しない形でデータ連携を実現し、論理的な一元性と柔軟性を両立します。 これは、従来のような勘定系システムを頂点とした従来の中央集権的な構造から、各システムが役割に応じて自律的に連携する形態への変革を意味します。

▼サイロ化についてもっと詳しく知りたい
⇒ サイロ化|用語集

▼iPaaSについてもっと詳しく知りたい
⇒ iPaaS|用語集

自律分散型アーキテクチャーによる銀行業務の最適化

基幹系システムの負荷を抑えるオフロードの仕組み

全銀システムや保証会社との連携、ファイル連携ツールであるHULFTを用いた基幹系の処理などは、金融機関として極めて高い安定性が求められます。こうした重要な処理を維持しつつデータ活用を推進するため、iPaaSを介してデータを適切な層へ配置するオフロードの手法が注目されています。これにより、基幹システムに直接的な負荷をかけることなく、必要なタイミングで周辺のSaaSや分析基盤へデータを供給できる可能性が広がります。

既存資産と最新サービスのハイブリッド連携

金融機関の社内には、長年運用されてきたレガシーな資産と、新しく導入されたクラウドサービスが混在しています。自律分散型アーキテクチャーでは、APIによるリアルタイムな連携と、ファイルベースの従来型連携を統合的に管理します。全銀システム等から届く固定長ファイルをiPaaS上で自動変換し、クラウド上のデータ層へ同期させることで、古い形式のデータも現代的なビジネスプロセスの中で活用できるようになります。基幹システムを大きく改修することなく、必要なデータのみを周辺システムへ配信できる点は、投資対効果の面でも大きなメリットとなります。

iPaaSが実現する内製化の推進とガバナンスの確保

データ連携のパターンが増加する中で開発の停滞を防ぐためには、標準化された連携基盤の存在が欠かせません。 そこで、お勧めしたいのが、ノーコード/ローコード型のiPaaSの活用です。 視覚的なインターフェースでデータ連携のロジックを構成できるため、特定の担当者にしか分からないブラックボックス化を防ぎ、IT部門が主導して迅速にデータパイプラインを構築・修正できる体制を整えられます。

また、金融機関という極めて高い信頼性が求められる企業組織において、データの流れを一元的に可視化できることは重要です。分散したシステム間のデータ流通を監視することで、厳格なアクセス制御や証跡管理を効率的に運用することが可能になります。これにより、セキュリティ水準を維持しながら、ビジネスの変化に柔軟に対応できる基盤が構築できます。

業務の高度化を支える具体的な活用シーン

システムの柔軟な連携は、具体的な銀行業務において新しい価値を生み出します。融資業務では、勘定系の取引履歴や会計SaaSの財務データ、保証会社の審査結果を統合し、SFA上で常に最新の情報を確認できるようにすることで、精度の高い与信管理や経営支援が可能になります。また、分析基盤で得られた知見を自動的に営業の現場へフィードバックする仕組みは、組織全体の生産性を向上させます。

ウェルスマネジメントの領域では、預金動向に加えてアプリの閲覧履歴などの行動データを掛け合わせることで、顧客のニーズに合致したサービス提案が可能になります。重い分析処理をクラウドへ逃がすことで、フロントエンドの操作性を損なうことなく高度な提言を実現できます。

さらに、不正検知やコンプライアンスの強化においても、このアーキテクチャーは威力を発揮します。入出金データやモバイルアプリのログイン情報、外部のリストなどをリアルタイムで照合することで、異常な挙動を即座に検知する体制を構築できます。従来は手作業で行っていたスクリーニング業務を自動化し、検知精度の向上と運用工数の削減を両立させることが期待できます。

結論:データ連携基盤を戦略的資産として再定義する

SaaSの導入は業務改善の第一歩ですが、その真価を発揮させるには、組織全体でデータを循環させるアーキテクチャーが不可欠です。iPaaSを核とした連携基盤の構築は、単なるシステム接続の変更ではなく、営業担当者が情報収集から解放され、ITエンジニアがより創造的な業務にシフトするための重要な投資です。

データ連携基盤を、変化の激しい時代に対応するための戦略的資産と位置づけ、既存のレガシー資産と最新のテクノロジーを論理的に統合していくことが、これからの銀行業務におけるDXを成功させる鍵となります。

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記事を書いた人

所 属:データインテグレーションコンサルティング部 ソリューションアーキテクト

K. F

前職では金融機関にて営業職および社内SEを経験。セゾンテクノロジーへ入社後、プリセールスとしてデータ連携基盤に関わる提案支援およびサービス企画を行いながら、金融領域におけるデータ活用法を発信。趣味は、野球観戦・温泉巡り・映画
(所属は掲載時のものです)

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